お笑い工学研究所

お笑い工学を研究する元お笑い芸人の「佐々木くん」とお笑い工学を広く伝えたい「そもんず」によるお笑い工学の研究所です。

「笑い」とは感情のクシャミである

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どーも、お笑い工学研究員の佐々木くんです。

 

今回はコラム的な感じでゆるーく書いていこうかなと(笑)僕がいつからか思っていたこんな考えを理解していただけると、お笑い工学でやろうとしている事がより分かり易くなるのではないのかなー、と思います。

 

 

一応ね、芸人時代に仲のいい同期に話したこともあるんですが、何というかその...取り合ってくれなくて。。変わり者が多い芸人周りでもさらに僕は変人扱いされていたんですよねw   理解して貰えないのは悲しかったですけど、僕も確信を持っているし「情報の価値は受け手の能力に依存する」ともどこかで聞いたことがありますしね!落語レジェンドとして知られる立川談志師匠も、技を盗むにはある程度のレベルに達している必要があるとおっしゃっていましたしね!(怒)

 

 

 

なので、当時誰にも理解されなかった怒りを込めてドウゾ!(私物化)

 

 

人には皆、感情のコップを持っている

どこかで聞いた話なんだけど、花粉症というのは皆の体の中にコップのような物があると聞いたことがあります。そのコップに少しづつ花粉が蓄積されていって、それが一杯になると誰でも花粉症になりうると。まぁ、この話に医学的な根拠があるかどうかはわかりませんが。

 

僕は笑いも一緒だと思っています。

 

笑いというのはエネルギー量だと思っています。で、その感情を受け止めるコップというのが一人一人にある。そしてエネルギーが蓄積されて、それが溢れた時に、人は感情を動かされるんだと思います。ビックリしたり、恐怖を感じたり、人を好きになったり、笑ったり。喜怒哀楽、全部一緒です。感情のコップが一杯になってる。沸点と言い換えても良いかもしれない。そして、そうする為に、アートには色々な仕掛けがされてると思うのです。言葉によるフリ・オチフォローみたいな物はその中の一つに過ぎないのです。

 

 

アートとは日常をフリにしている

第一回ツイキャスでも少し話題に上がりましたが、同じセリフを2回言う説を提唱した時にそもんずさんから「フリはいらないのか?」という質問が出ていました。僕もお笑い工学を作る為にもう一度勉強している中で、思い出したこと。新たに考えがまとまった所があるので、これにもう1度答えていきたいと思います。

 

人間はふだん五感を生活している環境にフィットさせています。感情を日常でいつも使う範囲にチューニングしてしまうんです。それ以外の感覚をカットしてしまいます。だから、近くで会話するのに必要なボリュームに合わせてあるし、声のトーンもそうです。それが習慣になってくると、そのボリュームや起こる出来事を想定して日々を過ごすようになります。そこにバイアスが生まれるんですね。これがいわゆる感情のコップです。コップが日常のコミュニケーションで使う分だけ入るサイズに設定されてしまうんです。

 

それに対して大き過ぎる声だったり、しつこ過ぎたり、2回おなじセリフを繰り返して言ってみたり。こうした事は何らかのハプニングが起こらない限り、普通は日常では起こりません。そういう事を意図的にやってその感情エネルギー量でコップを溢れさせる。コップが溢れると笑いだったり、何らかの感情が動かされる。これがアートなんですよね。

 

 

モンハンに学ぶアート的プログラミング

みなさん、モンスターハンターというゲームはご存じでしょうか?俗にいうモンハンってやつですね。いまシリーズ最新のモンスターハンターワールド(MHW)というのが出ているようです。簡単に説明するとプレーヤーが戦士的なキャラクターを動かして、大きいボスモンスターを殺して肉をえぐるというゲームです(雑)

 

僕もシリーズの4をプレイした事があるんですが、このボスモンスターのプログラミングに僕は当時驚きました。ボスは色んな攻撃をしてくるんですが、当然ボスですから簡単に倒せないようにプログラミングされてある訳です。

 

そんなボスの動きは、大体のパターンが決まっているんですが、その中で「同じ動きを2回繰り返す」というのがあります。大きなシッポを振りかぶって、体を回転しさせてビンタさせてくるのですが、この行動を2回やってきます。難易度が上がると3回とかやってきます。

 

 

2回同じことを繰り返す」ってことに人間は反応できないんですよね。

 

 

高確率でシッポビンタを食らってダメージを受けてしまう。

 

 

もちろん1度パターンが喰らってしまえば警戒すれば避けられるのですが。これを初めて見た時に僕は「お笑いと同じやん!」と思いました。お笑いと同じやん、と。同じやん。

 

 

これだけじゃなくて、他の攻撃も2回繰り返してきます。お笑いの基本的な考えは予想を裏切ること。つまり分かってやっているんだと。しかもまた難易度が上がれば上がるほど、動きのスピードも速くなったり。これはかなり微調整して、人間が反応しにくい動きを計算してプログラミングしてるんだなーと感心しました。

 

 

エヴァのOPにみる感情コップの溢れポイント

先ほどは感情コップが溢れる瞬間をゲームに学びました。今度は映像に見てみましょう。ちょうど芸人を辞めてから映像の技法を分析するのにハマりだし、今もダラダラとやっているのですが、みなさんご存じ新世紀エヴァンゲリヲンのOPのアニメから感情コップを溢れさせるように、心を狙ってぶっ刺しにきてる部分があったのでこれをちょっと参考に見ていきたいと思います。これヲタの知人に言っても全然理解されなかったので、同じ対象が好きでも鑑賞者と表現する者はやっぱり違うのかなと思いました。

 


Evangelion Opening

 

このOPに感情の沸点越えてくる部分が2箇所あります。まず1箇所目は50秒から52秒までのメカ描写。映画やなんかでも昔からカッコいいメカ描写というのがあります。例えばコックピットの手元だけ写って、レバーをグッと引くシーンとか。ガンダムシリーズではお馴染みのカットですね。こうしたアガるメカシーンというのがあります。それが速いテンポでバッバッバッバッと4カット流れます。1つでもアガるシーンなのに短時間に4つも見せられると、それはもう「おおおおおおお!!」となります。急にアタマ悪くなりましたね(笑)でもちょうど4カット目で感情が動かされるので、計算してるとしか思えないんですよね。

 

続いて2箇所目。1'06〜1'09。エヴァの口元が開くカットから始まり、エヴァの上半身がグアアアアっと右から左に動くまで。これも手や足などエヴァの部分的なパーツを何カットか見せておいて、最後にエヴァを右から左にダイナミックに動かすことで、沸点を超えてきています。僕は映像の専門家ではないので分かりませんが、単純にカット数ということでは無く、その1カット内でもアニメーションに動きを作ればエネルギーが加算されるのではないかと仮説を立てています。

 

 ちなみに、ジャズ大名というコメディ映画(原作:筒井康隆  監督:岡本喜八)でも、旗本が大名のいる部屋に行くまで報告行くシーンがあるんですが、ふすまを開けて部屋を横断してまたふすまを開けるというシーンが連続で4回繰り返されます(笑)これは2回同じ行動をとるというよりも、同じ行動をずーっと取り続けるってやつですね。みんな無意識で「いつまでやんの?」とか「しつけーよ!」っていう感情を起こさせる笑いですね。

 

僕が大好きなラップバトルの人気番組フリースタイルダンジョンも、ほぼほぼ同じ仕組みですね。あれは言葉による意味やフリオチもありますけど。芝居なら普段はだったら味わわないくらい、強い感情をぶつけられるので感情はコップから溢れる。物語なら構成上のフリオチギャップで。小説だったらリズムで読ませて丁度エネルギーがMAXになるところでパンチラインを入れてくる。当然物語でのパターンも小説内には入っくる。

 

 

結論

...と、いうようにアウトプットの出口は違えど、本質は一緒。「全てのアートは感情のコップを溢れさせようとしている」。というのが僕が言いたかった事です。なので、ことばのロジックによるフリは必ずしも必要ないんですね。なぜなら日常がフリになっているから。もちろんフって落としてツッコんでという流れでもコップをいっぱいにする事は出来ます。でもそれ以外にも方法はあるんだよ、というのを詳しく解説しました。

 

だから前に書いた記事での「伝える力」だけでも笑いを起こす事はできるんですね。よく会議やプレゼンでは声の大きい人の意見が通りやすいと聞きますが、それも感情コップ理論の一種だと思います。ふだんそんな大きなエネルギーをぶつけられないからビックリしちゃう。そういうワザを積み重ねることによって、明らかに間違ったことでも相手に「ひょっとしたら自分が間違ってるんじゃないか...」と思わせる事は全然起こせるハズです。なので宗教やマルチの変な勧誘とか、アートネイチャーの個室カウンセリング営業には注意したいですね!

 

という事で、今回は僕が勝手に思っている、感情コップ理論を説明しました。これを応用して笑いとる方法論をこれからも提示して行けたらと思います。以上、ご静聴ありがとうございました(笑)

 

おしまい